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コラムNo.22

老後に備えて

岸医院
  後 藤 基 子

老後の楽しみと脳の活性化のために、カルチャー教室で数年前に習い事をふたつ始めた。ひとつは書道で、もうひとつは朗読である。書道は現代詩文書といって、詩や歌を心の趣くままに書く講座だ。自由に書くと言っても、私は初心者で全く基礎がないので、縦横の線を書く練習からはじめ、今は楷書や行書を習っている。私は、ひたすら先生の手本通りに書こうとがんばっているのだが、30年以上やっていらっしゃる方は、手本なしに自分で字のバランスをとりながら書かれる。臨書というのも習っている。王義之や空海といった名跡の書を手本として書く訓練だ。古典の言葉を読み、理解し、一点一画をじっくり観察し書き写す。こうすることで筆が自由に動くようになるらしい。「書は人なり」とも言うが、良寛や熊谷守一のような無心の境地で書けるようになるには、心の修行も必要だ。書道は奥が深く、美しい字が、無心に書けるようになるためにはどのくらい時間が要るのだろう。少々スタートが遅すぎた感じである。

声を出すのはストレス解消になるだろうと思い、3年前に朗読を始めた。高校以降、ほとんど黙読で、声を出して読むことは久しぶりで新鮮で楽しい。朗読は、作品の内容をわかりやすく伝え、しかも味わい深くなければいけない。そのために大切なのは、文章の内容をよく理解していることと、声を鍛えることだろう。声を鍛えるために、腹式呼吸で発声したり、早口言葉のような文章を繰り返して口の筋トレをする。私は、昼休みに愛犬を相手に練習している。アナウンサーや俳優さんは、日頃こういう訓練をよくしておられるので、朗読が上手である。教室では、先生が選ばれた小説や随筆、詩や童話などを10人ぐらいの生徒が順番で読み、先生がコメントしてくれる。色々な作品を読むことができ、これもとても楽しい。私には、詩の朗読が一番むずかしい。作者の心情を理解し、美しく読むことができたらいいなと思う。

ふり返ってみると、私はこれまであまり趣味らしいものがなかった。学生時代は体育会系のクラブ活動に参加したが、運動神経のない私は、すぐ挫折してしまい続かなかった。そんな私にとって書道と朗読は、新しい楽しみ、刺激となっている。これからもゆっくりではあるが、長く続けていきたいと思っている。

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