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コラムNo.33

済生丸

岡山済生会総合病院皮膚科
  吉 富 惠 美

私が現在勤務している岡山済生会総合病院では愛媛・香川・広島の4県の済生会病院との共同で、無医島の多い瀬戸内の多数の島々を済生丸という船で巡回し、検診や診療を行っています。私もこの1月にその診察に携わる機会がありました。

これまでも皮膚科では年に1回程度医療相談をしていたそうですが、今回から診療が開始されることになりました。診療ですから、診察するための器具や処方する薬を船に用意しておかなければなりません。何せ初めてのことなので、何人の患者さんが受診されるのか、どんな疾患の方が受診されるのか全く予想がつきません。手探り状態で何とか準備を整えました。

当日は早朝の6時5分に岡山駅に集合です。

1月なのでまだ外は真っ暗です。今回の巡回に携わる、内科の医師・保健師さん・検査技師さん・事務員さんとともに、山陽本線に乗り込みました。電車の中でゆくっりと夜が明け、空が明るくなってきました。1時間ほどして笠岡に到着。徒歩で港に向かいいよいよ済生丸に乗船です。船の中には、レントゲン撮影、超音波検査、眼底検査、尿検査などが行える設備があり、診察室も2部屋あります。船の中を案内していただき、検査用の顕微鏡を用意しているうちに船が出港しました。今回は岡山最南端の六島での診察です。朝日を浴びてキラキラと光る海を眺めながら1時間ほど船に揺られていると目的の六島に到着しました。

島では愛育委員の方がお手伝いして下さり診察開始です。内科は超音波検査の日でしたので15人程度の予約が入っており次々と患者さんがやってきます。しかし皮膚科の患者さんはなかなか来ません。愛育委員の方や保健師さんが「今日は皮膚科の先生が来て下さってます。皮膚のことで何か困っていることはないですか?」と声をかけて下さいますが、皆さん「大丈夫です」と帰って行かれます。「うおのめがあるけど、服を脱ぐのが面倒だからいいです」という方も…。

結局4人の方を診察しただけで終了となりましたが、愛育委員の方からは「専門の先生の診察を受ける機会はなかなかないので本当にありがたかったです」との温かいお言葉を頂き、恐縮するばかりでした。

診察終了後は、評判の美味しい昼食を船内でごちそうになり帰院の途につきました。

さて、その後病院での仕事も終わり5歳と10歳の子供のお迎えに行くと、二人とも不機嫌です。実は子ども達にとって朝に母親がいないのは初めての体験でした。何かあったのかと思えば、5歳の弟が早く起きてしまいママーと泣いてなかなか泣きやまず、10歳の姉が起きてなだめながら遊んであげていたのだそうです。二人とも寝不足で不機嫌だったのです。二人とも頑張ったのねとねぎらい、不機嫌な二人をなだめながら家に帰りました。ささやかですが子どもの成長も感じられた1日となりました。

来年もまた1月に皮膚科の診察が予定されています。1年に1回の診察では十分とは言えないかもしれませんが、少しでもお役に立てるのなら来年も早起きして頑張ろうと思っています。

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