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コラムNo.53

岡山にいる山陰の医者

岡山済生会病院 肝臓病センター
  川 上 万 里

私の出身は鳥取大学で、七年前に岡山に来ました。私の名前をご存知の方がおられるとしたら、それは倉敷市真備町で勤務していた折に届け出た「日本紅斑熱」が県内初めての報告で、これを契機に注意喚起がなされたからでしょう。ダニの専門家のように呼ばれることがありますが、そうではありません。ただ、私のいた山陰ではリケッチアは稀な疾患ではなく、数例の経験がありました。「山陰にいたあなただから診断ができ、救命できたのだ」と言われたとき、妙な気持ちになりました。それまで山陰を離れたことを非難する声が大きく、後悔することも多かったのですが、このとき初めて「山陰から出てきたことにも意味があるのではないか」と思い直しました。その後も岡山で嫌な目に遭う度、この症例を思い出し、自分を肯定しました。

二年前、県のドクターバンクに登録し、「肝臓病センター」と専門を生かせるところに所属しました。しかしながら、今もって薬局説明会や講演会の案内はほとんどなく、新薬の情報には疎いままです。大学医局の力が強いのでしょうが、医局関係者以外には目を向けない岡山の閉鎖性を残念に思います。医局に属さない存在を受け入れるキャパシティを岡山が持てるか、否か。岡山の今後の医療に多少は影響することと思いますので、是非考えていただきたいテーマです。少数派の意見をもう一つ。安倍内閣の政策に女性の起用増大も含まれていると知り、医療界でも女性への思慮が増えることを期待しています。が、この場合の「女性」も今までと同様に「ママ」に限られるのでしょうか。独身の私も世間が思っているほど強靭でも気楽でもありません。育児はしないが暇ではなく、休日は年数回入院する親の介護にあてています。この両立が難しいことは今更言うまでもありません。独身女医にも更年期は訪れますが、身体の不調は「甘え」と切り捨てられ、既婚女医が免除される当直も独身女医には該当しません。女医への配慮が増えるならこれからは独身女医も含めていただくことを希望しますが、実際には期待できないことも分かってはいます。ただ、これから医師を目指す女性たち、今は若くとも必ず老いていく女医たちが少しでも配慮された環境で働けるように行動した足跡は残したいものです。

現在岡山市の中心地でチーム医療に加わっていますが、少し前まで僻地で孤独に働いていたことを忘れることはありません。厚労省研究班の一つに所属しておりますので、担当の「A型肝炎」「E型肝炎」の発症があれば、血清や情報をご提供いただき、担当の先生に厚労班研究につながっていただきたいと思っております。それが先生方の多忙な日常の新たな息吹となることを願って・・・。

岡山にいる山陰の医者、四方は壁でも、頭上に青い空が広がっていることを信じて歯を食いしばっています。

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