こんな物忘れは危ない−脳血管障害の早期発見のために−
・生理的な“物忘れ”とは?
50歳を過ぎる年齢になると、誰でもすぐには人の名前、物の置き場所などが思い出せなくなることがあります。このこと自体は生理的な脳の変化によるもので心配はありません。これらの状態は“物忘れ”あるいは“健忘”と呼ばれ、記憶力の低下以外の症状はなく、数カ月たっても症状が進みませんので、日常生活も問題なく送れます。

・病的な“物忘れ”とは?
しかし“物忘れ”は、ときに病気の最初の症状のこともあります。これは単なる“物忘れ”に、それ以外のいろいろな知能障害(判断力・企画力の低下、人格の変化など)が加わるもので、だんだん症状が進み、日常生活、社会生活に支障が出るようになります。

・脳血管障害が大きな原因の一つ
知能障害の原因には、脳自体が病気になる場合と、脳の働きと密接な関係にある血糖、電解質(塩分)、ホルモン、ビタミンなどの異常による脳の機能異常の場合とがあります。 前から高血圧や糖尿病の薬を服用していたり、過去に脳梗塞を患ったことはありませんか?
手がしびれる、めまいがする、ロレツがまわりにくい、自分の感情を十分にコントロールできない(いつもニコニコしている、あるいは極端に涙もろいなど)ことがありませんか?
物忘れに加えて、これらに思い当たったら、脳血管障害が原因である可能性が高いといえます。早めにかかりつけの医師に相談してみましょう。

・脳自体の病気
アルツハイマー病、脳血管障害(多発性梗塞痴呆)、慢性硬膜下血腫、脳梅毒、エイズ、脳腫瘍、老人性うつ病など

・脳以外の病気
甲状腺機能低下、低血糖、薬の副作用、脳下垂体の機能低下、ビタミンB12欠乏症、慢性腎不全など

表 老年期の知的機能の変化
  生理的な物忘れ
(健忘)
病的な物忘れ
(病気)
本態 生理的な脳の変化 病的な脳の変化
経過 進行しない 進行する
症状 記憶障害だけ 健忘に加え、判断力低下、人格変化などがある
見当識 異常はない 時間、場所、相手がわからないことがある
日常生活 支障ない 問題行動がある


指導:金沢医科大学神経内科  廣瀬 源二郎 教授