脈の乱れ

脈の乱れは有史以前から人々を不安にさせ、また祈とう師(医者)を困惑させていたと思われます。中国では、漢の時代から脈の乱れと生命予後との関連性を重要視し、脈が50回に1回飛ぶのは正常、40回に1回の場合は4年の余命、30回に1回の場合は3年の余命、20回に1回の場合は2年の余命、10回に1回の場合は1年の余命、3回または4回に1回脈が飛ぶと約1週間の命、脈が1つずつ飛ぶと3日、4日の命、と医学書に記載しています。

これは、統計学からの推定ではなく名医の個人的な経験と直感によるものでありましたが、この教えの影響は大きくその後の東洋における脈の乱れに対する考えを支配しました。

20世紀に入り心臓病の病因が解明されるのに伴い、脈の乱れを有する患者の生命予後は、脈の乱れの原因である基礎心臓病(心筋梗塞、心筋症、心筋炎、弁膜症など)が最も重要な決定因子であることが分かってきました。さらに、統計学的な検討から、生命予後は基礎心臓病ばかりでなく不整脈のタイプ自体にも依存することが判明しました。

ローンは、脈の乱れ(心室期外収縮)を生命予後との関連性で5つのタイプに分類し、1時間に6個以下程度の心室期外収縮は生命予後に影響しないと結論しました。これは、脈が50回に1回飛ぶのは正常と記載した漢の医師の記述と同一であり、古代中国医師の直感力には感心させられます。