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コラムNo.25

日々是感謝。育児と育自

岡山博愛会 御幸町クリニック
  中 尾   愛

「はやく、たかたぢゅけなさい!」

「まだぼくがつかってるんだから、かたづけなくてもいいの!」

今日も二人の息子がリビングでけんかをしている。4歳と6歳の兄弟だが、一丁前の理屈を捏ねる上にその口調はいやになる程(語勢まで)私のそれに似ている。私はキッチンできゅうりをフルスピードで刻みながら、兄弟喧嘩に介入すべきか否か、するなら何時かを思いめぐらしている。

夫に「きみは日頃、主婦と医と母と父と、4足の草鞋を履いて頑張っているんだから面白い文章が書けそうだね」と笑われた。同業の「イケメン」夫は公園に連れて行く、入浴させる、怒らず優しい、などなど立派な「イクメン」で感謝の念に堪えない。しかし昨年から隣県の基幹病院に単身赴任しており、目下遺憾ながら「ルスメン」とでも申しましょうか。よって子供は私の口真似ばかりが上達する。草鞋を履くというより、そんな彼らにハダシで翻弄されている方が正しい私である。

パートとはいえ診療に復帰して3年がたった。復帰の際には、医局と岡大病院の「MUSCAT」にお世話になった。わずか数年の休業でも、薄れた記憶の多いこと。救急実習、検査手技など心強かった。

独り立ち?して勤める当クリニックは創立120年を迎えた岡山博愛会の創立の場所で、病院が新築移転した跡地で外来診療のみ続けている。かつては子供がたくさん駆け回っていた場所と聞いているが、今は高齢化社会のモデル地区の如くで、数百メートル先の総合病院への通院も侭ならぬ方々が多い。「ここが開いていて有り難いわぁ」の声をいただく度、責任と緊張を感謝とともに思い起こす。

そして、日々思うのは、メディアから溢れ出す健康情報に戸惑う方々の多いこと。「何を食べたら良いの」「この病気はどうしたら良いの」と。理屈は出来るだけ簡潔に、図解も添えてご説明したときの「なるほどなぁ。ありがとな」が何より嬉しい。そして少し反省する。今夜はあの子たちの話にもちゃんと向き合おう。「うちのお庭にアンモナイトいないの?」「どうして今日はクリスマスじゃないの?」「どうしてママはたくさん食べないの?」。

産後・育休後の女性医師復職が叫ばれて久しい中、保育園の確保や病時保育に苦労なさっている先生も多いと聞いている。私は保育園に通う息子達が熱を出せば近くに住む母に預けられるし、代診の応援も頼める。大変恵まれた環境にある。反則技だとは思うが、先日はどうしても預ける算段がつかず、診察室の隅にマットを敷いて息子を遊ばせながら診療した。診察中の会話に何かと参加したがる息子を小声でたしなめながら聴診器を構える私に「子供はええなぁ。頑張ってな」と逆に励ましていただいた。育児をしながらの診療に、実に多くの応援を頂いていることに毎日感謝している。育児は育自とも言うらしい。せっかく応援をいただくのだから、自分も成長してゆかねば!

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