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コラムNo.5

が・ん・ば・れ・な・い

松香内科医院
  松 香 陽 子

岡山県女医部会主催の会合へは、部会長・副部会長が大学時代の部活の先輩・同級生であり、また地区医師会長という立場もあり、時間の都合がつく限り参加している。女性医師の場合、出産・育児をしなくても、妻に任せられる男性医師と違って、家事は自分でしなければならないから、男性医師と同等の仕事をしようとすると負担は大きいといえる。女性医師が20%を占め、医学部の3~5割近くが女子学生という時代となっては、彼女らが家庭を持ち子供を育てながら仕事を続けられる環境整備を早期に行わないと、医学部の定員を少々増やしたところで、臨床現場で実動する医師数が絶対的に不足するのは明白である。

また、最近の医学部学生の専門科を選ぶ基準が、勤務時間の短さ、休暇の取りやすさ、患者の生死に関わらないこととか。ついに内科医も絶滅危惧種に入ったとも。私が死ぬ時は内科医に診てもらって死ねるのか不安になる。医師を目指した動機は何であったのか改めて尋ねたい気がする。

勤務医21年のうち開業前の16年間、中規模救急指定病院のO市民病院に勤務したが、実はA院長は「女医」が嫌いだと赴任当初に人から聞かされた。

しかし、私自身、男性と同じ条件で仕事をし、内科以外にも、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科に女性医師が赴任し、男性と同等に仕事をこなしたことで認識を改めて下さったようである。当時の内科では、月4~5回の日当直と当直前後の36時間連続勤務は当たり前、出勤しなかった休日は年に数えるほどで、ワーク・ライフバランスなどという洒落た言葉も無く、十数年前のマスコミは「勤務医が大変だ」なんて取り上げてもくれなかった。

さすがに40歳代になると当直明けの外来の能率は悪く、疲労は回復せず、慢性睡眠不足で、今から思えばいつ医療事故を起こしても不思議はないという状況であった。その頃TV番組で、アフリカの孤児院で働く尼僧(神に仕える身)ですら2週間の休暇をもらっていることを知り、自分も何とか短い休暇を取り、リフレッシュを試みたが効果は続かず、もはや気力・体力の限界(千代の富士の心境)になり、平成9年4月父の医院を継承した。

一切告知しなかったので、当分の間患者も少なく、昼寝を満喫しながら、遣り残した学位論文の執筆を終わらせることが出来た。

引退気分で、極力コストを押さえて医院を建て替え、最小限のスタッフで始めた医院も、日が経つにつれ患者は増え、医療の進歩に伴い難しい疾患を抱えた患者を病院から委ねられ、紹介状や介護保険関係の書類や届出書類が増え、診療報酬改訂に翻弄され、またまた忙しくなってきた。

その上、「NOといえる日本人」に成り損ね、この春から児島医師会長を引き受けてしまい、会合や苦手な原稿書きが増え、附属の准看護学校の式典、新公益法人制度への対応などに息も絶え絶え、これ以上もう頑張れません。

自分への褒美として、この夏は130年ぶりの猛暑のロシアへ。泥炭火災で煙ったモスクワのクレムリン、黄金の環を巡り、サンクトペテルブルグで念願のエルミタージュ美術館、エカテリーナ宮殿、ピョートル大帝夏の宮殿など多数の世界遺産を訪ね、サーカス・バレー観賞等を楽しみ、しばらくは機嫌よく働けそうです。でももう次の旅を考えなくては。

酒も飲めず、ゴルフもしない私にとって海外旅行はまさに現実逃避の手段。

どんなに忙しくても、これだけは「が・ん・ば・る・ぞ」!

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