岡山県医師会

TOP >  岡山県医師会の活動 >  役立つ会報Lineup > EnJoi通信

役立つ会報Lineup

EnJoi通信

EnJoi通信のTOPへ戻る

コラムNo.29

ひと仕事終えて

医療法人福和会 木下医院
  木 下 美 喜 子

女医部会の皆様におかれましてはご清祥でお過ごしの事とお喜び申し上げます。

私は、平成7年(長男:小学校6年、次男:4年の時)に岡山市妹尾の地で、泌尿器科・皮膚科・内科として開業いたしました。2人の息子の子育て真最中に、夫からの急な開業の話に困惑しながら、少しでも手助けになるならと思い決心致しました。ところが、子育てもそうであった様に自分一人で頑張らないといけなくなるとは夢にも思っていませんでした。昨年までの10年間は実父の脳梗塞の看護・介護と診療の両立でした。そのうち7年間は近くのしげい医学研究所付属病院にお世話になり、手厚い医療を受けながらでしたので、診療を休むことなく、娘として悔いなく見送ることができました。2人の息子たちもそれぞれ医学部を卒業し、研修に励んでいます。

診療は、開業当初、1週間が1ヶ月と長く感じられましたが、次第に3ヶ月が1年、1年が3年と、少しずつは慣れてきました。でも、3年もすれば落ち着くと言ったお話とはずいぶん違いました。よく泣く子供、医者嫌い、待ちたくない、無理を言う患者様は何時しか院長を離れて、私の患者様になりました。無理を言う一部の患者様のために時間を取られ、心優しい患者様をお待たせする事は心が張り裂けそうになります。そんな中、あんなに泣いていた子が、診察室を出る時にスマイルで「バイバイッ!」に変わり、私の心を笑顔で満たしてくれ、「痛かったら又来たるわ!」と捨てゼリフをくれた方が、コツコツと診療をしていくうちに「先生に任せるか、診てもらって良かった」に変わってくれると、心保護・強心剤より心臓が癒やされます。

コツコツと共に生き、共に老いるといった日常診療の毎日ですが、幾度もの薬価・診療報酬の改正や電子カルテの導入など種々の変革は医療スタッフにも負担が及んでいます。

処置すればするだけ、薬を処方すればするだけ医師の負担となって行きます。仕事が終わって疲れているときに文章を書くとどうしても愚痴っぽくなってしまいます。

日々の診療の中で、女性医師の存在を喜んでくださる事は本当に多く、「長年悩んで死のうと思ったこともあった。」「結婚しないでおこうと思っていた。」「こんなに簡単に治るの?」「異常じゃなかったの?」と女性にしか相談できなかった事に喜んで下さいます。特に産後や更年期の急な体調変化で、色々気になる所が出て来るようです。私は、大学勤務時から乳癌で入院していた母の看病をし、身体障害者の兄を診ながらの子育てのため7年近く医療の現場から離れていました。でも、その時間は決して無駄になりませんでした。今の、診療に役立つ経験と勉強になりました。開業後休むことなく診療して来られたのも賢明な患者様の教えや、そのときに学んだ知恵のお陰と思っています。

PM 8時30分これから買物、帰って夕食の支度です。開業当初は真夜中に食べることもありました。健康を考え、野菜たっぷりの夕食を作っても「こんなに野菜ばっかり食べれるかぁー!」と殆ど残され、2人分の食事が私のお腹に入ります。おかげで検査データは満点ですが体重だけは赤点です。

文章が苦手でお断りしようと思っていましたが、女医部会のためにご尽力いただいている神﨑先生に感謝し、また、頑張られている女医の皆様にエールをお送りしたく執筆依頼にお応えいたしました。末筆ながら、皆様のご健勝をお祈り申し上げます。

ページトップ