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コラムNo.52

稀有な存在、泌尿器科女医!そしてウロギネ!

みやびウロギネクリニック
  院長  井 上   雅

泌尿器科といいますと、男性の科というイメージが強いかと思います。たしかに7割は男性患者ですが、3割は女性患者です。でも、オシモのイメージが強く、女医で泌尿器科を選択する人は少なかったと思われます。実際、私が入局した平成11年頃は泌尿器科医の約2%が女医でした。他科と比較してもかなり、女医率は低かったと思われます。そんな泌尿器科になぜ、入局したかといいますと、手術が好きだったのもありますが、『これからは女医の時代だ!』と公文教授にいわれ、『お~、そうかあ~♪』とその気になり、さ らには、稀有な存在には価値があると思い込み、入局を決めました。長~い歴史のある岡山大学泌尿器科においても、やっと3人目の女医ということになりました。当時は、泌尿器科女医がいない県もありましたから、岡山は女医が多い方だと思います。

ただ、入局してからは女性だからということは全く考慮されず、医局対抗のバレー、バスケ、野球の練習は付き合わされ、レガッタにおいては同期に混じり、男性チームのレースで漕ぎました(コックスではありません)。診療においては、看護師と間違えられることも多く、患者様から、診察したにもかかわらず『医者にみてもらってない』と怒られたこともあります。その事件?以降は診察前に『担当医の井上です』と宣言するようにいたしました。また、若い男性患者だと診察室に入って、私の顔をみると逃げだそうとするので、それをとっ捕まえて診察しておりました。ただ、女性の患者様からは非常に喜ばれました。やはり、女性患者様はオシモの相談を男性医師にはなかなかできない方が多いようでした。

女性の患者様にとっては、女医は相談しやすいというメリットを感じました。また、自分自身が妊娠、出産の際に、腹圧性尿失禁を経験し、『大変!こんなんじゃ、やっていけない!』と感じたこともあって、女性泌尿器科(尿失禁症や頻尿など)の領域を専門にすることにしました。もちろん、私の失禁は一生懸命に骨盤底筋体操をやることにより、症状は改善し、現在にいたっております。

幸い、公文教授の予言通り、世の中も次第に女性泌尿器科が流行りだし、岡山大学泌尿器科でも、女性専門外来を立ち上げることになり軌道に乗せることに成功しました。さらに、TVM手術が日本に導入され、追い風となり、女性泌尿器科の分野は広がっていきました。男性だけの科ではないということが認知されはじめ、現在では女性泌尿器科医は5%に増えました。

しかし、女性専門外来をやっていて、痛感したのは泌尿器科医でやれることは限られているということでした。どうしても婦人科的なことは婦人科へ、となってしまいます。泌尿器科と婦人科の壁に悩んで(それほど悩んでないですが)、その壁を取り払った診療がしたいと開業する決意をしました。

そして、平成25年10月にみやびウロギネクリニックを開業いたしました。ウロギネというのは聞き慣れない言葉だと思いますが、ウロは泌尿器科(urology)でギネは婦人科(gynecology)という意味です。主に女性の骨盤底に関する疾患(骨盤臓器脱、尿失禁症など)を扱う分野です。これらの疾患は泌尿器科と婦人科の境界領域の疾患で、どちらの科を受診したらいいか悩まれる患者様が多いと思います。当院は、泌尿器科と婦人科の両方から患者様を診察します。ウロギネという言葉が、岡山でも浸透するように、あえてウロギネをクリニック名にいれました。

開院して約1年ですが、患者の9割は女性です。その中には、長い間悩んでいたけど、受診する勇気がなかったと言われる方が多くいます。そして、まだまだ受診できずに悩まれている方は大勢いらっしゃると思われます。

岡山ではウロギネを専門で扱っているところはありません。さらに稀有な存在になってしまい、まだまだ認知度もありませんが、この言葉が広まるように頑張りたいと思います。

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