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コラムNo.55

長い道のり

ほう皮フ科クリニック院長
  ほう 郁 江

中学1年の担任が英語の先生で、その美しい発音に魅せられて、自分は将来英語の先生になろうと決めていました。大学を卒業し、大阪で英語を教えていた時、弟が医学部に入り、解剖学など興味深い話を聞いているうちに、私も医学を勉強したいという元来持っていた希望が強くなり、いわば第二の人生として、医学の道を志しました。語学が大好きで、韓国語も同時に習得したかったため、韓国ソウル大学医学部に帰国子女枠で入学し、人より実に12年遅れて医学を勉強しました。温かい友人たちに助けられながら卒業し、国家試験を終え、日本に戻ってさらに国家試験を受験し、前後して結婚出産を経験しました。

出産後は、生後6カ月になる娘を母に預け、恩師氏平一郎先生のご紹介で岡山大学医学部皮膚科に入局し、自宅の倉敷から片道約40分の自動車通勤をしながら研修医時代をすごしました。深夜の帰宅もまれではなく、お盆・年末年始は帰宅するなり病院に呼ばれ、出産前には13kg増加していた私の体重は一気に元に戻りました。子供の入学・卒業式・参観日には、たいてい行ってあげられず、母としての悲哀を味わったこともありました。しかし最近は、働くお母さんにさまざまな配慮が国を挙げてされるようになり、本当に良い時代になりつつあると思います。幸い、前岡山大学皮膚科教授の荒田先生から米国留学の機会も与えて頂き、充実した勤務医生活を終えました。しかし、開業の準備には、本当に時間がなく第2の大変さを経験することになりました。いつまで経っても、この前開業した気がするのですが、実にもう8年目という長い年月が経ちました。荒田先生が校長先生を勤められていた岡山医療技術専門学校で、開業した年から医学英語担当を命ぜられ、理学療法士・作業療法士・医療秘書・歯科衛生士さんの卵を対象に今でも英語を教えています。週1回、英語の先生に変身できるこの時間が、実は大好きです。

すぐ近辺に皮膚科がなく、地元で皮膚科クリニックとして認識され、休日に外出すると、患者さんに声をかけられるようになりました。築33年の実家を建て直し、自宅兼クリニックとして、本当に良かったと思っています。一つの建物で、通勤時間なく家事と仕事を効率よくこなすことができ、女性にとっては大変ありがたく、やり残した仕事は、好きな時に続きをすることができます。しかし、勤務医時代とは違って、スタッフの管理や、経営面、医院の管理など、診療以外のさまざまな仕事が山積みされており、仕事のことは、24時間、頭を離れることはありません。しかし、その分やりがいのある仕事だとも言えます。

皮膚科は、赤ちゃんからお年よりまで、幅広い年齢層の患者さんと接することができ、皮膚の病気を治すという面から、人生の一部に触れ、人と人との信頼関係ができるのは、大変嬉しいことです。今日はどんな人に出会えるかなと期待しながら毎朝の診療を始めることにしています。そして、これからも長い道のりをスタッフや患者さんたちと共に歩んでいけたらと思っております。

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