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コラムNo.68

仕事と子育て

大野眼科
  大 野 広 子

Enjoi通信をいつも楽しみに読んでいます。このたび原稿を依頼され、私の歩んできたことが少しでも若い女性医師の方々に参考になればと思い、書かせていただくことにしました。

私は大学卒業後岡大眼科へ入局し、関連病院での研修期間を含めて約6年勤務しました。30歳で長女出産、出産の直前に学位を取得しました。産休後2年間川鉄水島病院へ勤務しました。その後実家の眼科でパート勤務をしながら、34歳で長男を出産しました。平成4年に同じ眼科医の夫と玉野市で眼科を開業しました。開業した時、長女が7歳で長男が3歳でした。早いもので開業して23年が過ぎました。

業当時は医院経営のことやスタッフのことなど全てのことが初めて経験することばかりでしたので、仕事のことでいっぱいになりました。診療は最初から二人体制にしました。眼科の特性もあり、スタッフの人数を多く確保しなければなりませんでしたが、なかなかうまくいかず苦労しました。また、診療以外にしなければならないことがたくさん増えました。経理、スタッフの労務管理や募集、給与賞与の算出など、今までしたことのないことばかりで、慣れるまで大変でした。メリットとしては、診療時間や休診日をある程度自由に設定できること、自宅と医院がつながっているため通勤時間がゼロであることが挙げられます。また、建築関係や金融関係、会計事務所などいろいろな異業種の方々と出会うことができました。そして一人の患者さんの経過を長く診ることができるのもメリットだと感じます。幼児期に初診された斜視の子供さんが心身ともに成長していく過程を成人するまで見ることができたり、開業初期に白内障手術を受けられた方がその後も定期的に通院され、20年以上の長いお付き合いをしている方もおられます。スタッフも最初の頃は定着率が悪く数年で辞める人が多かったのですが、最近は産休育休後も復帰してくれるようになり、10年以上勤務してくれる人も増えました。これは人事や人材育成の専門家の方や社会保険労務士の方に指導していただいているおかげだと思います。医院経営の中で最も大切なことは良い人材を確保することだと感じていますが、気持ちの通い合うスタッフと長く一緒に仕事ができるのもメリットだと思います。

開業した時には子育て中でしたので、自宅と医院をドア1枚で行き来できるようにしました。幸い近所の方で家事をしてもらえる方が見つかり、その方や近くに住む義母に助けてもらいながら、なんとか仕事と子育てを両立しようと頑張りました。子供が学校から帰ってくる頃には自宅に戻って一度は子供の顔を見るようにしたり、学校の行事や参観日には診療を夫に任せて、できるだけ出席するようにしました。子供たちが中高生の頃、毎朝お弁当を作って7時20分の電車に遅れないように送り出していた10年間がとてもなつかしく思い出されます。でも後になって、「お母さんは仕事ばかりに目がいっていて、子供のことを見てくれていなかった」という厳しい言葉が返ってきて、子供たちにかなりの負担をかけていたんだということを思い知らされました。子供にとっては未熟な母親でしたが、2人とも無事に成人して社会人になり、長女は結婚しました。

30代で開業しましたので、勤務医を続けた場合との比較はできませんが、何とか今まで無事に仕事を続けてこられたのは家族をはじめ周囲の多くの人たちのおかげで、それがなければ続けることができなかったと、つくづく思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。今では子供たちも巣立ち時間的にも少し余裕ができましたので、学会にも行ける時はできるだけ参加して最新の情報を得るようにしています。参加すると興味がわいてきて、次も参加したくなります。行きたい学会に行けるのも開業のメリットかもしれません。他にもやりたいことがたくさんあるので、これからは自分の時間を大切にしながら生きていきたいです。

以上、とりとめのない文章になってしまいましたが、私の仕事と子育てについて書いてみました。今までの自分を振り返る良いチャンスをいただきました。これからも大切な家族や周囲の人たちに感謝しながら、もうしばらくは眼科医として地域の患者さんのお役に立ちたいと思っております。

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