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コラムNo.71

岡山で婦人科医療に従事して

倉敷平成病院
  婦人科医長  太 田 郁 子

はじめまして。岡山県に転居してきて、もう10年になります。日本 大学医学部卒業後、同大学の産婦人科学教室に入局し、大学院は生殖 発生学を専攻して学位を取りました。東京の大学病院と関連病院に約 7年在籍しておりましたが、気が付けば、岡山県に来てからの年月の 方が長くなっており、支えていただいた皆様への感謝でいっぱいです。

私の勤務する婦人科は、倉敷平成病院 総合美容センター 婦人科 です。名前からして、美容婦人科、女性医療をイメージされがちなのですが、私は美容も 女性内科も一切やっておりません。この10年間、自分の専門である子宮内膜症、子宮腺筋症、 更年期障害を中心に診療をしております。

子宮内膜症は古くから指摘されている疾患ですが、早期発見、早期治療が有効であるこ と、不妊との関連など詳細が分かってきたのは、腹腔鏡手術が普及してきたこの15年とい われています。なるべく新しく安全で有効な治療法を提供すべく、日々勉強と研究の毎日 です。

ホルモン療法は日進月歩で、5年で大きく変わります。その例として既に「更年期のホ ルモン補充療法は副作用に乳がんリスクが上がる」という時代から、「ホルモンを補充し ながら、子宮がんと乳がんのリスクを減らす」時代になっています。

昨年はパリのヨーロッパ子宮内膜症子宮関連疾患学会に参加してきましたが、海外のド クターと触れ合いの中で、日本の婦人科医療の問題点や展望が見えてきました。例えば、 ヨーロッパではMRI検査が約35万円、腹腔鏡手術が25万円です。当然MRI検査より、直接 腹腔内を覗く腹腔鏡手術が先行されます。一方日本では、MRI検査の方が安価のためMRI 検査が先行しますが、子宮内膜症の早期診断はMRI検査より腹腔鏡検査の方が格段に正確 です。更に私たち婦人科医が行う経腟超音波検査は、海外ではソノグラファー(技師)が 時間をかけて行うため、精度も高くさまざまなテクニックが考案されています。

「日本は早期診断が不正確」と言われ悔しい反面、診断にこだわる海外のドクターの姿 勢に心を打たれました。私たちはたくさんのホルモン剤を用途ごとに使い分けますが、ホ ルモン剤を本当に効果的に使用するために最も必要なのは「確実な診断」であることを学 びました。

婦人科医がホルモン剤を使用するうえで、最も重視しがちなのが副作用ですが、まずは 主作用を重視し、その症例ごとに副作用のリスクを検討することが本来あるべき姿である と思います。女性ホルモン剤と一言でいっても、生殖年齢女性に使用する製剤と閉経後女 性に使用する製剤は異なります。また、現在ではSERMs(選択的エストロゲン受容体モジュ レーター)も加わり、より効果的で副作用の少ない製剤が開発されています。今後もエビ デンスと正確な診断にこだわりながら、生殖内分泌治療を行っていきたいと思います。

現在、メドピアという医師向けのサイトで、婦人科ホルモン治療のエキスパートドクター をしております。ホルモン剤は一見非常識と思われる処方が、実は最新のエビデンスによ る最先端治療ということがあります。他科の先生からのご指摘は非常に勉強になりますの で、ぜひご質問を賜れれば幸いです。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

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