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コラムNo.80

共働きは主夫と主婦

医療法人 庄医院 渡邉 亜希子

私は今年でちょうど卒後20年、専門は消化器ですが、現在は岡山市中区で長年内科小児 科を開業してきた母とともに地域医療に奮闘しています。

今回、何を書こうかなと考えましたが、せっかく女性医師という立場でいただいたお話 なので、時々人に話すとよく驚かれる私の日常をご紹介したいと思います。

私の家庭はいわゆる夫婦共働きで、小学生の娘との3人暮らしです。主人は急性期病院 に勤めていて、普通なら家の事にあまり協力してもらえないようなイメージがありますが、 我が家はかなりの分業体制で主人が積極的に家事に参加してくれています。

例えばある日の朝5時半(頃。寝ている私には詳しいことはわかりませんが)、早起き の主人はまず庭の水やりを終え、新聞と牛乳を取り、娘と自分のお弁当と朝食を作ります。 それから私と娘を起こし、みんなで朝食。その後は私が娘の身支度を整えている間に主人 が朝食の片づけをし、ゴミを出し、娘をバス停まで連れて行きがてら出勤していきます。 どこの家でも毎日行われている普通の朝の一コマです。そう、主人と私を入れ替えれば、 の話ですが…。

こんな話をすると大抵は驚きと非難の嵐です。私はやりたい放題の奥さんのレッテルを 貼られ、ご主人が可哀想!とばかりにひたすら評価の下がる私の横で、主人はぐんぐんと 評価を上げるばかりです。もちろん、分担しているのは家事だけではなく、共働きですか ら家計も半分半分ですし、子供の勉強をみたり掃除と洗濯、夕食は私の担当です。ですが、 主人が褒められることはあっても、なかなか我が家の体制を評価されることがないのが実 情です。時には評価どころか、人にこの話をすると、「君の名誉のためにあまり口外しな い方が…。」と忠告される始末です。

今でこそこんな毎日ですが、結婚当初は夫婦共働きといえども家事と育児は女性の仕事 とばかりに、いそいそ頑張っていました。娘の面倒を一手に引き受け、手の込んだ料理に 小鉢を付け、ワイシャツにはピカピカにアイロンをかけ…などなど家事の一切をやってい ました。そんな忙しいある日の夜、いつものように夕食を終え私が洗い物をしている隣で 晩酌をしながら彼はぽつりと言いました。

「昔は毎日自炊もしていたけど、今では仕事から帰ってきても何もすることがなくて寂 しいな。」

口は災いのもと…。主人の仕事以外の生きがいを奪っていたなんて、とその時いたく反 省(!?)した私が熟慮した結果、今の主夫と主婦の分業体制が始まった次第です。その後 は坂道を転がるように、ではなく、働く二人のバランスを保つべく今の状態が出来上がっ ていったのですが、時々ふと彼は我に返るのか不機嫌そうにこう言います。

「僕、ちょっと家事やりすぎじゃないかな?」

ですがそんな時、私もすかさず言うのです。

「こんなにしてくれる旦那さんはいないってみんな褒めてたよ。私も家事に専念できる んだったら完璧な奥さんになれる自信があるんだけど。でもパパだって幸せ者だよ、こん なに稼いでくれる奥さんがいて。」

そういってにっこり微笑む私を見て、怪訝そうな表情を浮かべつつもそんなものかな、 と甲斐甲斐しく夕食の片づけをしている主人の隣で、今日も私はゆっくりワインを傾ける のでした。

と、この文章を得意げに書き上げたところで、母の「これ本当に出すの?」などなど私 の身を案じる声もありましたが、きっとこれからの共働きの若い人たちはこんな感じのは ず、少なくとも私たち夫婦を見ている娘はこれが普通だと思っているので、将来そんなの 当り前になっていると信じています。

いずれにせよ、お互いありがとうの感謝の気持ちを忘れずに、これからも仕事に家庭に 頑張りたいと思います。

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