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コラムNo.81

ふるさと新見でチャレンジ! ~夢ふくらむ地域医療~

思誠会 渡辺病院 外科/岡山大学病院非常勤講師/新見公立大学非常勤講師 溝尾 妙子

私は岡山県北部の新見市で生まれ、高校まで地元で過ごしました。幼少期、近くの医師は「困ったら誰でも何でも診てくれる人」であり、そんな「家庭医」が私の医師としての基盤です。「家庭医」の心は持ちつつ、緊急、特に外傷に対応できる技術を習得したいと考え外科を志しました。さらに女性からのニーズが高い乳腺外科をサブスペシャリティとし、現在に至ります。

将来的には新見で働きたいと思いながらも、自分のキャリアアップや困った時の相談場所など不安もあり躊躇していました。岡山大学大学院での研究が一段落したころ、岡山大学キャリアセンターMUSCATの新見サテライトオフィス(PIONE)のお話をいただき、週1回新見公立大学と市内の病院に勤務できることになり、新見に一歩近づきました。

PIONEの事業の一つとして、岡山大学のキャリア支援制度を地域に応用した「新見地区キャリア支援制度」があります。本人のライフスタイルに合わせた自由な勤務形態で地域の病院で働くことができる制度です。私は2年前に出産しましたが、産後復帰に当たってはこの制度を活用して、週2回新見市内の病院、残りを岡山大学病院で勤務しました。新見では実家に育児の協力が得られやすく時短勤務なので、無理なく働くことができました。また、医師が少ない新見市では短時間でも必要とされ、また自分の専門である乳腺外来を新たに提供できたので、地域にもメリットがあったと思います。地域では、限られた時間でも自身の能力を十分活かして活躍でき、ワークライフバランスを保てると実感しました。

そのような経緯で、2016年4月からは念願叶って故郷新見市の渡辺病院で常勤として勤務しています。現在は地域で最も必要とされている総合診療に日々奮闘しています。救急では断ると後がないので、あらゆる疾患の初期対応を行い、必要に応じて高次医療機関へ搬送するのも大事な役目です。入院患者さんの主治医もしていますが、高齢者が多いため医学以外の問題も多々あり、多職種と協力しながら退院支援をすることにやりがいを感じます。そして、終末期医療も課題で、「住み慣れた新見で最期まで過ごしたい」という声にできる限り応えたいと思っています。毎日新しい課題が出てきて改めて勉強することもたくさんあり、研修医に戻った気分で新鮮です。総合医としてはまだまだ未熟ですが、忙しいながらも楽しんでいます。

自分の専門分野も地域で活かせています。渡辺病院での乳腺外来のみならず、新見市の乳がん検診の啓発活動にも関わり、愛育委員に対する乳がん講話や市民公開講座も行っています。

また、PIONEの活動の一環として地域の医療従事者育成にも励んでいます。岡山大学に全面的にご協力いただき、新見公立大学が中心となって、市内の医療従事者向けのシミュレーショントレーニングを行っています。また、岡山大学GIMセンター主催の教育や緩和医療に関する講義を新見でライブ中継するサテライト授業も新見公立大学で行い、新見市内の多くの医療従事者が受講しています。

私の夫も新見出身の医師ですが、鳥取で勤務していたため結婚以来ずっと別居状態でした。4月からは哲西診療所に勤務することとなり、4月からようやく家族3人の生活が始まりました。夫も地域医療に奮闘中ですが、その一方で家事や育児もしっかりこなしてくれます。私たちは「その時にできる方がやる」というスタンスで、家事と育児は平等に2人でやっています。とはいっても2人とも忙しく、私たちの両親には子供のことで協力してもらっています。平日は家族3人すれ違いの事が多いですが、休日はできるだけ3人一緒に過ごし、それが一番の楽しみです。 

新見でのチャレンジは始まったばかりです。地域で働く医師として、母として、地域の方々に育てられながら成長していきたいと思っています。そして今までの地域医療の枠組みに捕らわれない新たな挑戦をしていきたいと、夢を膨らませています。現在、家族3人、新見ライフを満喫中です。

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