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コラムNo.90

消化器女性医師の男女共同参画の現状と取り組み

川崎医科大学 消化管内科 塩谷 昭子

私は、幸運にも、2年前に極めて少ない消化器病領域女性教授のポジションを得ることができました。私に課せられた使命は、若手医師の育成であり、同性の良きメンターとなって女性医師のキャリア継続およびキャリアアップの支援を行うことと考えています。本稿では、消化器病学女性医師研究者の会や日本消化器病学会の取り組みをご紹介します。

消化器病学女性医師研究者の会の活動

消化器病学女性医師研究者の会は、私が日頃から研究面でご指導を頂いている米国Baylor大学David Graham教授のご提案により、2001年に結成されました。消化器病学を専門とする女性医師・研究者の直面している様々な問題を取り上げ、その解決へ向かって社会的環境の整備を各方面へ働きかけながら、キャリアの向上を図り、その能力を発揮し消化器病学の発展に寄与し、社会への貢献ができるようにするための情報交換および問題解決の具体的な方策を考え発信する場として、発足しました。Graham教授は、『日本の社会の発展は、いかに社会が女性を活用し、女性が社会に貢献できるかにかかっている。』と言われます。

2010年に、一般社団法人日本消化器関連学会機構において、本会をサポートするための臨時委員会が発足され、資金援助を受けながら、年に1回の会合と2回の会報の作成を行ってきました。

日本消化器病学会の取り組み

日本消化器病学会では、他学会に先駆けて「女性消化器医師支援委員会」を設置し、女性医師支援のための具体的な取り組みをはじめています。到達目標として、1.次世代を担う女性消化器医師の育成、2.キャリア形成の推進とキャリアアップ支援、3.消化器病学における女性リーダーの育成、4.キャリア継続可能なシステムの構築を掲げています。

2012年の集計で、消化器病学会会員数に占める女性の割合が12.2%であるのに対して、支部評議員は3.6%、学会評議員1.7%と低率でした。学会活動への女性の参画を推進するために、支部例会の座長および支部評議員の積極的な女性医師の登用を働きかけ、子育て中あるいは復帰予定の女性医師が対象となるようなハンズオンの開催も行っています。本年度からは、支部例会の際の託児所の設置を要請し、補助金が出されるようになりました。

委員会でおこなったアンケートの結果、学会での演題発表、専門医、医学博士などの資格の取得状況に男女差を認めませんでした。しかし女性は、座長や評議員などキャリアの向上に対して男性より消極的な傾向が認められました。女性医師の育成には、女性ロールモデルの存在が不可欠で、仕事への意欲が高く指導的立場を目指す若手女性医師のモチベーションを維持させることが重要と考えられます。環境整備のアンケートでは、院内に託児所(保育所)があるのは78%と高率でしたが、夜間保育・病児保育は50%以下で、24時間保育は30%のみと低い結果でした。また、労働時間が1週間に40時間を超える医師の割合は、評議員93%、育児中の女性医師も48.3%と高く、男性も含めた勤務医師の長時間過重労働の改善が必要であり、キャリア継続可能なシステム構築のための環境整備が早急に望まれます。

女性医師キャリア支援

東京女子医科大学では、離職した女性医師が再研修を決意するための準備として、「教育学習支援プログラム、e-learning」を立ち上げ、「女性医師・研究者支援センター」「女性医師再教育センター」を発足しています。岡山大学では、男女共同参画の実現を目指した「MUSCATプロジェクト」が始動し、行政、県医師会、県病院協会などと連携した活動を展開しています。川崎医科大学でも、育児支援に加え、短時間労働や当直の免除等、労働環境の整備に取り組んでいます。今年から臨床教育センターに内視鏡検査および治療のシミュレーターが導入される予定です。本学でもリカレント教育支援の体制を整えて行きたいと考えています。

おわりに

女性医師が、子育てを楽しみながら、特性を生かした分野で、社会に貢献できることが理想的です。託児施設の充実と、復帰時のリカレント教育支援体制の整備が早急に必要と思われます。女性消化器病医の活躍には、女性医師を取り巻く社会的支援に加え、女性医師が社会に貢献しようという気持ちを持ち続けることも重要です。私自身は、21世紀の消化器病学の担い手である若手医師の育成に、尽力していきたいと考えています。

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