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コラムNo.13

料理教室~心のゆとり~

吉備医師会 きび皮膚科形成外科クリニック
  漆 原 嘉 奈 子

月に一度、イタリア料理の教室に通うようになり約5年がたちました。イタリア料理といえばパスタ、ピッツァと思いがちだった当時の私には、目から鱗であったことを覚えています。料理の腕があがったかどうか定かでありませんが、レパートリーは確実に増えました。

教室で会う生徒さん達は、普段接する医療関係の方ではなく、主婦はもちろん会社員、飲食店店主さん(料理のプロの方)など年齢も20代~60代までと多岐にわたり、そこで交わされる会話は料理のことはもちろん日常の事象であったり、季節の話題であったりとささいなことです。先生は私と同年代の方ですが、フランス、イタリアで料理の勉強をされ、今でも1年に1回以上イタリアでホームステイをして新しい料理を勉強して来られます。今のイタリアを見て、それを日本で学べることはとても幸せなことです。またプロの方が来られる教室ですから、そこでの会話は貴重なものです。

教室では約3時間でアンティパスト(前菜)・プリモ(メイン)・ドルチェ(デザート)もしくは、プリモ・セコンド・ドルチェの3品を皆で作ります。料理はもちろん、食の大切さ、使われる食材やワインの話、ハーブやオリーブオイルの使い方、イタリア人の食に対する考え方、日本との違いなど学ぶことがとても多くあります。

例えば私の好きなメニューにフェンネルとイワシのパスタがあります。この料理はシチリア伝統料理なのですが、13世紀にシチリアに駐在していたアラビア人が当時経済的で栄養価のある料理として考案されたというエピソードがあります。これをレストランで食べるのでなく、自宅で作ろうとすると大変です。フェンネル(日本名;ういきょう)は魚の生臭さを軽減してくれるハーブですが、これを入手するために倉敷の農園で調達します。季節のものですので時期を逃すと食べられません。

自分でフェンネルのかわりにデイルを使ったこともありましたが、やはり微妙に味が違います。食材を求めてスーパーではなく農園に行くことは料理教室に行くまで考えもしなかったことです。

医者になり20年以上がたちますが、自分が積極的に動かないことには他業種の友人はできにくくなっています。特に女性の場合、結婚して子供ができますと医師である自分、妻、主婦、母と役割がいくつもあり、家族の協力がないと自由な時間が少なくなります。この教室での3時間は私にとって心のよりどころであり、ゆとりの時間になっています。個人的に辛かった時期でも、いつも前向きで活動的な先生をみていると、どの業種であれ常に勉強し、貪欲に知識を増やし新しいことに取り組む姿勢が大切だと気付かされました。

立ち止まることなく、しかし心にゆとりをもって今後も日々学ぶ気持ちで仕事をしたいと思います。

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