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コラムNo.36

烏城彫りを始めて

井原市立井原市民病院 眼科
  岸 本 典 子

厳しい暑さの毎日ですが、皆様お元気でご活躍のことと存じます。女性医師コーナー Enjoi通信の記事を読ませていただき、女性医師の方々が生き生きと仕事も家庭も頑張っていらっしゃる様子に、いつも励まされ、元気をもらっております。

私は、岡山県の南西部、広島県との県境に位置する小さな街、井原市の市民病院眼科に勤務し、早いもので15年が経とうとしています。ここでも高齢化が進み、様々な病気を抱えながら「いつまでも眼が見える状態でいたい…」と受診されるご高齢の患者様が多く、眼科医としての責任の重さを感じながら診療しています。一方、週に約1度の弱視斜視外来(前岡山大学眼科教授 大月 洋先生が来られます。)の日には、待合も検査室も子供たちとその親御さんであふれ、賑やかで活気のある状態になります。

そんなあわただしい日々の中、昨年から烏城彫りを始めました。週に一度診察に行く矢掛町国民健康保険病院の看護師さんが、ある日、お盆やら、菓子器やら、茶托やら、沢山の烏城彫りを、全部自分で作ったものだと見せて下さって、ちょうど美術館講座のメンバーが少なく存続の危機にあるから、先生も入らないかと勧めて下さったのがきっかけです。教室は月1回土曜日午前中2時間、しかも行ける時だけでよいこと、作品も自分のペースで作ればよいこと、家でもできることなど、看護師さんの言葉と素敵な作品たちに惹かれ気が付くと入会していました。

烏城彫りは奥深い世界で、最初は文字、それから、古瓦、野菜・果物、花…といった具合に、彫る図柄も段階を追って難しくなり、また、彫り方にも細かな決まりがあります。ちなみに、今の私は、文字2作目です。昨年ようやく文字のお盆を一つ作りました。彫り終えたら仕上げに出すのですが、出来上がってきた作品はまるで自分が彫ったとは思えないほどの立派な出来で、たいそう驚きました。先生がおっしゃるには、「彫り手は素人だけど、仕上げをするのはプロですから。」とのことでした。教室では、初心者から10数年目の上級者まで、茶托、お盆、文箱、手鏡など様々なものに様々な図柄を彫っていらっしゃって、席を立って見て回るだけで楽しめます。「素敵ですね。難しそうですね…」といった言葉から、自然に会話も弾みます。図柄はどこかふっくらとかわいらしく、見ていると何だかほっとします。長期間教室に行けず、彫り方も忘れてしまい、また一から…ということも多々ありますが、手をかければかけただけ少しずつでも形になることや、無心で彫刻刀を動かすわずかな時間が心地よいことが気に入っています。

1年1作が当面の目標、いつか大好きな水仙の図柄の文箱を作ることが夢です。

このような日常の中で、医師として少しずつでも成長し良い診療ができますように、一方で、そんなささやかな時間を楽しみながら、上手に年を重ねられたらよいなあと思う今日この頃です。

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