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コラムNo.66

衰えゆく体とお付き合い

岡山愛育クリニック 産婦人科
  菊 井 敬 子

大学時代、テニス部で6年間汗を流していました。おかげで医者になったばかりのころは体力にはなんとなく自信を持っていました。ただ、仕事が忙しくても、外来・手術・分娩などの業務で学生時代の筋力や運動神経は当然維持できません。卒業後6年間ラケットを握らなかった私の生活に再び運動が取り入れられるようになったのは、30歳を迎えたころでした。研修医の先生に誘われて済生会のテニスクラブの練習に参加、人工芝の平らなコート上でつまずいて転びそうになった自分に愕然としました。大阪にいた卒後6年間はまだ歩く機会も多かったのですが、岡山に来て車に乗る生活になってから実感していた以上に体はなまっていたようです。それから10年、時間をつくってテニスを続けてきて今思うことを書いてみようと思います。

私が特に健康上問題を感じず過ごしてこられたのは33歳まででした。ふと触った胸に小さなしこりを発見、34歳になったばかりの頃、初めて体にメスを入れました。手術と放射線照射が終わると、痛みとひきつれで今までのようには腕が上がりませんでした。健康に自信がなくなり、身体よりもむしろ精神面へのダメージが強かったのですが、ネガティブになりがちな思考から解放されるひと時がテニスでした。走って汗を流し、ボールを打っていると、不思議と病気を忘れることができました。治療後の肩の可動域制限も、ラケットを振り回しているうちにいつの間にかなくなりました。

2回目に体にメスが入ったのは35歳での出産時でした。予定日超過、軟産道強靭、胎児機能不全で緊急帝王切開とは…高齢初産を痛感させられる事態でした。出産方法にこだわりはありませんでしたが、開腹手術は結構体にこたえました。ホルモン環境の変化と慣れない育児も加わって、腰痛・関節痛・肩こり・頭痛・膝痛…とこれまでにない体調不良に悩まされました。妊娠中に増えた体重も一因かと思い、産後2カ月でテニスを再開、ストレス発散、筋力アップ、減量に成功、これまたテニスのおかげで次第に体調も回復していきました。

何歳からでもトレーニングで体力はつくらしいですが、当然何もしなければ自然に衰えていくものです。この先、男の子の育児と仕事を両立させていくには、それなりに体力をつけ、維持していく必要があります。本当は単にテニス好きなだけですが、このような大義名分のもと、週1回テニススクールに通い始めてしまいました。計画通りに自分のペースで物事が運ぶのが好きな性格なので、育児・仕事・結婚生活は楽しいことばかりではありません。運動は脳内セロトニンを増加させると言われます。私にとってストレスをコントロールする上でテニスはなくてはならないものとなっていきました。

大好きなテニスに様々な局面で救われてきた一方、昨年は練習中に右アキレス腱が断裂するという事態にみまわれました。38歳後半のことです。周囲からは年を考えず無茶するからだ…、30代は気持ちだけ若いつもりでいるが体は衰えている…などと言われました。はい、その通りです。自覚していた以上に体は劣化していました。手術すればギプス固定2週間、保存的にいく場合ギプス固定2カ月とのことでしたので、手術していただきました。2週間後ギプスが外れると、膝下は筋肉がかなり委縮しており、患側の足で立っていることすらできません。装具が外れるまで2カ月間、車の運転ができないので通勤が大変でした。健康とは有り難いものだと、つくづく感じさせられました。スポーツ再開の許可が出る術後6カ月まで、地味で楽しくないリハビリが続きましたが、もう一度テニスをしたくて頑張っていたように思います。

そして39歳の今年、再び帝王切開で出産、振り返ってみると私の30代は計4回体にメスが入りました。毎度それなりにダメージがありましたが、その都度結構復活してきました。怪我もありましたが、30代でほころびが顕在化しているこの体と上手につきあっていく上で、テニスは大切な役割を果たしてきました。この原稿が掲載される頃は産後2カ月が経過、翌月には40代に突入します。仕事復帰、高齢でスタートした育児、そして心身ともに元気な40代のために、そろそろテニスを再開して体を調整したいと思う今日この頃です。

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