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コラムNo.79
腎不全センター 幸町記念病院 内科 高津 成子
1990年4月から帰岡に伴い透析病院に勤務して早26年が経ちました。
大学時代は混声合唱団で歌三昧の日々でした。色々な学部の個性的な仲間たちと歌うことが楽しくて仕方ありませんでした。
その後30年以上離れていましたが、お腹から声を出して歌う爽快感が忘れられず、空いた時間にレッスンしてくれる先生にも巡り合えたので、5年ほど前からレッスンに通っています。なんと、同い年ながら10歳以上若く見える気風の良い元気溌剌な先生で、老後の楽しみに末永く歌い続けましょう!といつも励まされ(?)ています。
毎年9月岡山市民第九を歌う会が有志を募って発足され、12月上旬に岡山シンフォニーホールでベートーヴェン第九番を演奏しています。老若男女、さまざまな職種の人たちが仕事や用事をやりくりして週1回練習を重ね、演奏日を迎えます。私も2012年、2014年と2015年の3回念願の第九の合唱に参加しました。通常勤務をこなしながら怒涛の3カ月を経て臨む大ホールの舞台は感無量で、岡山フィルハーモニー管弦楽団と合唱が一体となった演奏は大変気持ちの良いものでした。
いつかは合唱団でハーモニーを響かせたいと思いながら、今は月に2回、誰にも頼らず音を探りながら歌っています。最近思うのですが、ドイツ語、イタリア語やラテン語の歌詞を覚え、リズムに遅れないように歌うのは何よりのボケ防止のようです。
歌姫には程遠い現状ですが、施設やイベントで歌って人を和ませるグループができれば良いなぁと思っています。
ところで、当院は腎不全患者さんの透析治療を行う病院で、透析ベッド80床・入院病床35床を有し、常勤医4名・非常勤医4名で保存期腎不全(CKD)患者さんのシャント手術・透析導入から合併症治療や術後のリハビリ、悪性疾患や老衰の看取りまでを行っています。
一般診療は行わず、ご紹介頂いたCKD患者さんを共診の形で診させて頂いています。患者さんは安心されますし、長く診てこられた先生方に食事指導や服薬指導でお役に立つことができ、結果、透析導入が先延ばしできればうれしい限りです。
また、患者さんは大部分が人生の大先輩で、色々なことを教わっています。(中には反面教師もおられましたが…)
慢性疾患との付き合い方や、次々に見つかる合併症を抱えながらも前向きに人生を諦めない姿勢には、頭が下がる思いです。
「荷物を背負った人生はそれなりの味がする」とはご自身が透析患者であり、サイコネフロロジーという分野を深められた故 春木繁一先生の言葉ですが、当院の患者さんにも一人ひとりそれぞれに味のある人生を送って頂きたいと思っています。保存期腎不全の患者さんは、全員が透析をしないまま人生を全うしたいと希望して治療を続けられますが、残念ながら多くの患者さんは末期腎不全になり透析治療が避けられなくなります。
患者さんとご家族は、自分達に落ち度があったからとか、努力不足だったから…と自らを責めがちですが、スムーズに透析が始められ体調が良くなると、明るくなり意欲を取り戻されます。一大決心をして透析人生を始められるので、それまでの努力に敬意を払いつつも大きな節目を乗り越えられるようお手伝いをしています。
透析医療なので、安全で快適な透析の実施は当然ですが、最近は白内障の手術や抜歯等で近隣の先生方にご加療頂いたり、心臓・脳血管系の合併症や転倒骨折等の整形外科疾患で専門医療機関のお世話になることが増えました。薬剤の確認や透析条件の変更依頼など、いつも細やかに対応して頂き感謝するばかりです。
腎臓内科・透析医は地味でとっつきにくい印象があるかもしれませんが、所謂内科の仕事に加えて、透析の命綱であるバスキュラーアクセスの管理・PTAなどの外科的治療や血管内治療に興味のある先生方にお勧めです。慢性疾患の患者さんとじっくり付き合いますので、総合診療医・プライマリケア医を目指している先生方にも興味を持って頂ける所もあるのではないでしょうか。
先日、出石鹿田地区医師会の会合に初めて参加させて頂きました。
日頃診療情報のやり取りだけでご挨拶をする機会のない先生方と、少しでも近しく話すことができればと思い出席しました。
内弁慶で人見知りな性格ではありますが、気心の知れた先生が少しずつ増えることを楽しみに、自分なりのペースでできるだけ参加したいと思っています。医療・介護の連携を進めるには、まずは身近な地区から輪を広げていくことが大切だと思います。